「分布型光センシング」

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研究代表者:
藤野 陽三 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究課題:
都市基盤の災害事故リスクの監視とマネジメント

技術解説

都市インフラ構造物の広域分布センシングを本格的に実現させることを目的とし,分布型光ファイバセンシングの精度向上と高精度・耐久性光ファイバに関する研究開発を実施するとともに,都市インフラ構造物の各種構造性能指標の評価を行うための光ファイバセンシング手法およびそれによる構造ヘルスモニタリングシステムを構築する.具体的には,以下の3課題に取り組んでいる.

(1)計測機の改良による分布型光ファイバセンシングの高精度化およびリアルタイム測定の実現
計測器の改良について,新たに,PPP-BOTDAにおけるプリポンプ光の形状およびそれと主ポンプ光間距離の最適化により測定精度が飛躍的に向上されることが理論的に示され,初歩的な実験検討によりその効果が明確となった.また,①校正ファイバの設置による相対周波数安定度の改善,②温度補償抵抗の使用による温度変化に伴う振幅ゆらぎの改善,そして③SNR(signal noise ratio)の改善といった調整や改良をより深めて実施することにより,ひずみ測定精度および測定の安定化が図られ,測定精度は±25μεの範囲で安定化され,±10μεのレベルにも高められる可能性が見出された.さらに,①SNRの改善,②高速偏波スクランブラーの採用,③高速周波数制御や高速ADおよびハード加算の採用,そして④処理アルゴリズムの改善によるひずみ測定の高速化が図られ,2Hzでもある程度安定した計測が実現されており,分布型光ファイバセンシングによるリアルタイム計測実現の可能性が示された.

(2)センサの構造形式の改良による分布型光ファイバセンシングの高精度化の実現
これまでの研究で,連続繊維複合材との複合化により被覆すべりを制御することにより,分布型光ファイバセンシングの高精度化,実質的な空間分解能の改善,そして高感度化に取り組んでいる.また,実構造物への実装のために,連続繊維複合材との複合化およびプラスチックチューブの埋め込みによる保護,定点接着化により,高精度化光ファイバセンサの長期耐久性や耐候性の高度化構造の創出を行った.さらに,製作工程の考案および試験製作を行い,実構造物に試験的な実装を行い,実構造物に対する適用性や汎用性を初歩的に示した.

(3)分布センシングによる構造物の健全性評価システムの構築
実構造物への実装実験で得られたデータにより,昨年度に構築された分布型のセンシングによる直接的な損傷検知方法,損傷が生じない箇所の歪を参照歪とした間接的な損傷検知方法,そして,分布ひずみ値を用いた逆解析による荷重同定や鉄筋断面積の減少量同定による構造物の健全性評価システムの有意性を初歩的に実証した.

(4)実橋梁への実装実験
茨城県内のRC橋梁および鋼製橋梁を選定して,実装実験の事前準備および上記の高精度光ファイバの試験実装を実施し,計測の安定性や汎用性を検討している.また,光ファイバセンサの設置方法や,定期的な測定・データ取得手法,そして交通量や環境条件の計測を実施し,実装実験の基本データの取得を進行中である.

概要図

論文等

  1. H. Zhang, Z.S. Wu and K. Iwashita, Performance evaluation of PPP-BOTDA based distributed optic fiber sensors, Structure and Infrastructure Engineering, 2008 (In press)
  2. Z.S. Wu, B. Xu, T. Takahashi, and T. Harada, Concrete Crack Monitoring with BOTDR Fiber Optic Sensing Technique, Structure & Infrastructure Engineering, 2008 (In press, Available online)
  3. G. Chen, B. Xu, D.J. Pommerenke, and Z.S. Wu, Distributed Strain Measurement of a Large-scale Reinforced Concrete Beam-column Assembly under Cyclic Loading, Smart Structures and Systems, 2008 (In press)
  4. 西口憲一,岸田欣増,李哲賢,呉智深,ブリルアン分布計測におけるパルス・プリポンプ法の高精度化,信学技報,電子情報通信学会,Vol. 107, No. 513, OFT2007-68, pp. 33-38, 2008
  5. 李 哲賢,津田 勉,澤 貴弘,牧田 篤,高野 宏和,岸田 欣増、呉 智深,武田 展雄,水口 周,PPP-BOTDAを用いた高分解能(10cm)かつ高速(10Hz)分布計測の実現,信学技報,電子情報通信学会,Vol. 108, No. 245, OFT2008-42, pp. 39-44, 2008年
  6. H. Zhang and Z.S. Wu, Performance evaluation of BOTDR-based distributed fiber optic sensors for crack monitoring, Vol.7, No.2, pp.143-156, 2008
  7. Z.S. Wu, B. Xu, T. Takahashi, and T. Harada, Concrete Crack Monitoring with BOTDR Fiber Optic Sensing Technique, Structure & Infrastructure Engineering, Vol.4, Iss.4, pp.311-323, 2008
  8. G. Chen, B. Xu, D.J. Pommerenke, and Z.S. Wu, Distributed Strain Measurement of a Large-scale Reinforced Concrete Beam-column Assembly under Cyclic Loading, Smart Structures and Systems, 2008 (In press)
  9. H. Zhang and Z.S. Wu, Performance evaluation of PPP-BOTDA based distributed optic fiber sensors, Structure and Infrastructure Engineering, 2008 (In press)
  10. H. Zhang, Z.S. Wu, Development of no-slip optic fibers as Brillouin scattering based distributed sensors, Proceedings of the International Conference of Health Monitoring of Structure, Material and Environment (HMSME 2007), Nanjing, China, pp540-547, 16-18, Oct., 2007
  11. N.H.M. Kamrujjaman Serker and Z.S. Wu, Temperature Sensitivity of the Vibration based Damage Identification Methods, Proceedings of International Conference on Health Monitoring of Structures, Material and Environment. Nanjing China, pp.621-625, 16-18, Oct., 2007
  12. 呉智深,岩下健太郎,張浩,ブリルアン散乱分布センシング技術によるコンクリート構造物のヘルスモニタリングシステムの構築,コンクリート構造物のヘルスモニタリング技術に関するシンポジウム(コンクリート技術シリーズ No.76), pp.85~94, 2007

関連特許

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