「都市基盤広域リスク統合センシング」

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研究代表者:
藤野 陽三 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究課題:
都市基盤の災害事故リスクの監視とマネジメント

技術解説

本研究は,都市基盤における災害や事故防止による安全・安心の実現に向けて,リスクを手量的に評価・監視し合理的なリスクマネジメントを支援する統合センシングシステムを開発することを目的としている.長期的防災保全の最小化,災害事故の事前防止・影響波及の最小化の達成を目的に,
[1] 都市基盤施設のリスクのリアルタイム監視
[2] そのリスクの特性を明らかにした上での対応の合理化・迅速化
を図るのが本研究のねらいである.

都市基盤のリスクは,外的なハザードと都市基盤に潜/顕在する内的な脆弱性によって決定される.そのため,統合的なリスク評価のために,広域に広がる都市基盤群を対象としたハザード,脆弱性について共同研究者グループの開発する要素技術を統合し,モニタリング,データ伝達・処理に関わる実用性の高いシステムを構築し,都市基盤リスクの統合的評価手法の確立を目指す.より具体的には,主に以下に挙げる研究課題に取り組んでいる.

(1) 東大キャンパス内おける地震応答計測システムによるデータ解析およびリスク評価
複数の建物において地震応答計測システムを導入し,建物毎の相対評価や,東大キャンパス全体の地震リスク評価に資するデータ基盤を強固にする.

(2) 振動計測ノードの改良による高性能化,自動化によるシステムの安定性改善の実証
組込PCを用いて,計測の安定性や耐障害性の向上,ノイズの低減,計測の自動化を実現する計測ノードの開発を行い,一部成果が得られている.

(3) 計測データの標準化を目標とし,既存のデータモデルとの整合性も考慮したデータモデルの構築
計測データに関して,建築分野でのプロダクトモデルを含むBuilding Information Model (BIM)に耐震性能を記述するクラスを追加することで,幅広い利活用を想定したデータの標準化を行う.

(4) 高層免震校舎におけるLAN同期センサを用いた建屋内地震応答高密度計測による,高精度安全性確認のためのデータ解析と準リアルタイム地震・耐震情報発信システムの構築
既設の免震層での計測に加えて,棟内に地震計・変位計を付加的に設置し,この高密度計測システムを利用して免震装置の高精度性能評価と建物全体の動的性能の評価・推定を行い,さらに,周辺の地震観測データと構造損傷・劣化判定結果を建物の内容物や人的被害の推定,情報発信にリアルタイム利活用し,安全・安心な都市基盤のためのリスク評価・マネジメント手法の確立を目指す.

(5) 不規則振動理論に立脚した,加速度計による変位同定手法の提案
構造物の損傷レベルを示す尺度の1つである最大変位を,不規則振動理論に立脚した,加速度計による記録から求める方法を提案し,実データを使ってその妥当性の検証に取り組んでいる.

(6) 移動体センシングを含めたセミアクティブセンシング手法の構築
これまで不確定性が大きくノイズとして扱われている構造物を取り巻く環境からの微小な外乱とそれによる構造物の挙動を高精度に把握し,脆弱度の同定手法を構築する.特に,鉄道構造物のように線状分布系の都市基盤構造物を対象に,多入力・多出力を想定した,構造系のオンラインシステム同定手法を開発する.

概要図

図1 東大本郷キャンパスにおける都市基盤モニタリングの実装実験

図1 東大本郷キャンパスにおける都市基盤モニタリングの実装実験

論文等

  1. Y. Mizuno, Y. Fujino, “Data Archiving and Processing Method using Wavelet Decomposition for Structural Health Monitoring,” The 2007 International Workshop on Computing in Civil Engineering, ASCE, pp.673-680, 2007
  2. Yusuke Mizuno, Evan Monroig, and Yozo Fujino, Wavelet Decomposition-Based Approach for Fast Damage Detection of Civil Strcutures, Journal of Infrastructure Systems, ASCE, pp.27-32, 2008
  3. 阿部雅人, 藤野陽三, 自然災害リスクの特性に関する統計的分析, 土木学会論文集A, Vol.64, No.4, pp.750-764, 2008
  4. 阿部雅人, 藤野陽三, 不規則振動理論を援用した加速度記録からの地震時最大応答変位のリアルタイム推定, 土木学会論文集A, Vol.65, No.1, pp.136-150, 2009
  5. Yozo Fujino, Dionysius M. Siringoringo, Masato Abe, The needs for advanced sensor technology for risk assessment of civil infrastructure, Smart Structure and System (in press 2009)
  6. 水野裕介,センシングによる都市空間のリスク評価,第5回建設・環境マネジメント講演会-構造物および人間の健康診断とパターン認識技術-,pp.75-93,山口大学,2007

関連特許

関連リンク

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