「事故予知支援WEBサービス技術」

Check

研究代表者:
西田 佳史 (産業技術総合研究所 デジタルヒューマン 研究センター チーム長)
研究課題:
事故予防のための日常行動センシングおよび計算論の基盤技術

技術解説

子どもの事故を防ぐ方法の一つに、保護者に子どもの事故について知ってもらい、どんな状況だと子どもが事故に遭うのかを想像できるようにし、保護者の意識・行動を変容させ、環境を改善したり、子どもの行動を制御することで、事故を防ぐ方法がある。現在行われている対策は、書籍やポスターなどで保護者がしっかり注意することを呼びかけるといった情報の発信のみにとどまっている。これらの対策があまり効果をあげられなかったのは、第一に、文字や静止画での情報提供では、保護者にとって、自分の子どもがどのようにして、自分の家で事故に遭ってしまうのかを想像することが難しかったためである。第二に、事故に関する情報を提供するのみという情報の一方通行で終わってしまっており、その情報による効果の検証が行われていないからである。そのため、どの情報に効果があったのか、どのような方法による情報提供に効果があったのかなどを知ることができず、効果が低い情報を何年も繰り返して提供してしまうといった問題があった。

これらの問題点を解決するための試みとして、子どもが事故に遭う状況をCGアニメーション(図1)で再現し、その映像をWeb上で配信するサービスを、2005年12月から(株)ベネッセコーポレーションと開始した。このサービスでは、まず、利用者に子どもの年齢と発達段階を入力してもらい、それに応じて、その時期の子どもに起こりうる事故状況の映像の一覧を提示し、その中から見たいものを選択して、見てもらう。さらに、映像を見た後に、その事故に関する経験と、映像を見たことによる認知の変化を把握するためのアンケートを行った。これにより、どんな事故はよく知られているのかや、どの映像は保護者の認知を変化させるのに役立ったのかという評価が行える。このサービスでは、2005年12月~2009年6月までの期間での利用状況は、利用ユーザー数(複数アクセスを除く)7,298人、映像配信回数52,451回であった。映像のうち、6割近くが良く知られており、これからも起こると認識されていた(図2)。その他、2割強の映像が、知らなかったが、起こると思うと認識されており、これらの映像は保護者の認知を変容させるのに有用な情報であることが分かった。具体例としては、「1歳6ヶ月の乳幼児が、洗濯機に興味を持ち、近くに置いてあった段ボールを踏み台にして、覗き込んでいるうちに、洗濯機の中に転落してしまう事故」や、「1歳6ヶ月の乳幼児が、蓋が閉まった便器の上に乗り、飛び跳ねているうちに、転落してしまう事故」などの事故であった。

また、このようなサービスを提供することで、副次的に収集可能となるデータもある。例えば、サービスの始めに、ユーザーは自分の子どもに起こりうる映像を見たいので、子どもの年齢と発達段階を入力する。しかし、これらのデータを別の観点から扱うと、子どもの年齢と発達段階の関係性を導出することができる(図3)。同様な知見として、医学分野で使われている乳幼児の発達段階をチェックするシートであるDenver IIがある。Denver II は、1,819 人のデータをもとに作成されたものである。それに比べ、インターネット上のサービスを利用して収集すると、102 日で1,819人を超え、期間全体では54,453人という膨大なデータを用いて作成することができた。このようにインターネットを利用することで、短期間に膨大な量のデータを収集することが可能となる。

概要図

図1. 事故状況アニメーション

図1. 事故状況アニメーション

図2. ユーザーの映像に対する認識の割合

図2. ユーザーの映像に対する認識の割合

図3. 月齢と発達段階の関係

図3. 月齢と発達段階の関係

論文等

  1. 北村光司, 掛札逸美, 西田佳史, 本村陽一, 山中龍宏, "子どもの傷害予防教育・啓発に活かすVR 技術," 日本バーチャルリアリティ学会誌, Vol.14 No1, pp.11-20, 2009
  2. K. Kitamura, Y. Nishida, Y. Motomura, T. Yamanaka, H. Mizoguchi, "Web Content Service for Childhood Injury Prevention and Safety Promotion," Proc. of The 9th World Conference on Injury prevention and Safety Promotion, pp. 270, March 16 2008
  3. K. Kitamura, Y. Nishida, Y. Motomura, H. Mizoguchi, "Children Unintentional Injury Visualization System Based on Behavior Model and Injury Data," " The 2008 International Conference on Modeling, Simulation and Visualization Methods (MSV'08), July 2008
  4. 北村光司, 西田佳史, 本村陽一, 溝口博, "乳幼児事故予防のための情報循環システム," 日本ロボット学会誌, Vol. 25, No. 6, pp. 887-896, 2007
  5. 北村光司, 本村陽一, 西田佳史, 山中龍宏, 溝口博, "子どもの事故予防のための個人適合情報の生成手法," 第25回日本ロボット学会学術講演会予稿集, pp.2C18, September 2007
  6. K. Kitamura, Y. Motomura, Y. Nishida, H. Mizoguchi, "Knowledge Acquisition and Circulation for Childhood Injury Prevention and Safety Promotion," Proc. of The First IEEE Symposium on Foundations of Computational Intelligence (FOCI'07), pp.281-288, 2007
  7. K. Kitamura, Y. Nishida, Y. Motomura, T. Yamanaka, H. Mizoguchi, "Infant Behavior Simulation for Preventing Unintentional Injury," The 8th World Conference on Injury prevention and Safety Promotion, April 2006

関連特許

関連リンク

ページの先頭へ