「マイクロセンサノード」

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研究代表者:
石田 誠 (豊橋技術科学大学 工学部 副学長(研究担当) 教授)
研究課題:
社会の安全・安心に貢献するユビキタス集積化マイクロセンサの開発

技術解説

集積化大容量無線発電機構とRF集積回路が一体化された完全無線動作が可能なマイクロセンサノード素子の開発を行った[1-4]。RF集積回路においては、集積化無線送信器とセンサが一体化されたワイヤレス・スマートセンサを開発した。ワイヤレス・スマートセンサとは、センサで検出された信号を無線によってネットワークへ送信するセンサデバイスである。これまで、試作したチップからの送信が可能であることを報告してきた。本年度は無線発電機構と一体化するために、低消費電力化を目指した送信回路の設計と
試作、そして、評価を行った。
この結果はこれまで開発してきた無線電源回路[5]出力 (4mW/10msec) との整合が可能であることを示す。まず本学で試作した送信回路で動作確認し、さらに一般化するためにTSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の0.25m Mixed-signal/RF CMOS process技術で低消費電力化に向けたRF送信回路の設計と試作を行った。RF送信回路はパルス幅変調(PWM)方式を用いており、信号変調部、電圧制御オシレーター(VCO)、オンチップアンテナで構成される。図1に回路構成図と試作チップ写真を示す。送信器は1470m2100m (3.087 mm2)のコンパクトなサイズで設計及び試作した。
 図2は試作したパルス幅変調回路とVCOの出力を示す。この結果より各ブロックの動作が確認できた。本チップは伝送する情報をパルス幅変調し、図2(a)に示したように、変調された信号が“High”のときだけVCOを駆動させ、オンチップアンテナから送信する。
これにより既存のリングオシレーターを用いた送信器より低消費電力で動作が可能である。本チップは315MHzの搬送波を利用したとき0.75mWの低電力を消費しているのが確認できた。(投稿中)この値は従来の消費電力(VCOのみで40mW)ものより大幅に消費電量を低減することができた。
 さらに、パルス幅変調波からパルスの位置のみ表現するパルス位置変調(PPM)の研究も進めており(投稿中)、パルス幅変調方式よりさらに消費電力を最大50%程度下げることが出来たのを確認した。パルス位置変調方式を用いてTSMCの0.25mで試作すると、より低消費電力の送信器が期待される。パルス幅変調(PWM)方式の本送信器のオンチップアンテナから送信した信号の受信側で測定した電力を図2(b)に示す。
 インピーダンスマッチングなしのアンテナとありのアンテナの2種類のアンテナを用いて送信した信号である。表1に本チップの動作特性を示す。送信器駆動電圧は2Vで、89.1MHzから499MHzまでの搬送波を使用ができる。Dipoleアンテナを用いた受信側で、本送信器からの315MHzの信号を送信したとき、受信側と送信器の距離10cmで-32.3dBm、1mで-51.7dBmの受信電力を得ることができた。オンチップアンテナの周波数特性は製作条件によって異なる。そのため、製作後にもオンチップアンテナの周波数特性を調整、制御できるオンチップ・チューナブルアンテナを提案、製作し評価を行った。[7]
図3はLC共振器(アースに接続)とボンディングワイヤインダクタ(BWI)で構成されたオンチップ・チューナブルアンテナの反射係数(S¬11)特性とスミスチャートである。アンテナの動作周波数が,ボンディングワイヤの本数(1~9本)で制御でき,ボンディングワイヤ1本あたりで約100MHz変化できることを示す[7]。
本評価から開発したパルス幅変調送信器はセンサ信号を変調し、オンチップアンテナから送信まで出来るチップであることが確認でき、従来にない小型の無線センサシステムでの応用が期待できる。また、平成20年度より無線電波から供給電源の作製を開始し、電源回路の試作に成功している。最終年度はこの試作結果をもとに、試作された回路をNTTアドバンステクノロジ(株)より提供され、0.35μm BiCMOSプロセス技術への乗り換え可能かどうかの検討を開始している。本研究室内での設計環境の立ち上げ、及び、前記プロセス上でのデバイスモデルを用いた解析などを通して、その可能性を検索する。

概要図

図1 送信器のブロック図及び試作したチップ

図1 送信器のブロック図及び試作したチップ

図2 PWMgeneratorとVCOの出力特性及び受信電力

図2 PWMgeneratorとVCOの出力特性及び受信電力

図3 オンチップ・チューナブルアンテナの反射係数(S¬11)特性とスミスチャート

図3 オンチップ・チューナブルアンテナの反射係数(S¬11)特性とスミスチャート

論文等

  1. J. W. Kim, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, Development of radio frequency transmitters including on-chip antenna for intelligent human sensing systems, IEEJ Trans. Electr. Electron. Eng. 2 (2007) 365-371.
  2. J. W. Kim, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, Integrated inductors for RF transmitters in CMOS/MEMS smart microsensor systems, Sensors 7 (2007) 1387-1398.
  3. W. H. Lee, Y. T. Lee, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, Fabrication of thermoelectric sensor using silicon-on-insulator structure, Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) 7232-7236.
  4. W. H. Lee, J.W. Kim, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, Neo-transmitter using pulse width modulation, IEEJ trans. Sens. Micromachines 128 (2008) 7-11.
  5. M. Sudou, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, A novel RF induced power supply system for monolithically integrated ubiquitous micro sensor nodes, Sens. Actuators A. 145-146 (2008) 343-348.
  6. W. H. Lee, B. J. Gu, Y. Nishida, H. Takao, K. Sawada and M. Ishida, Oscillation-controlled CMOS ring oscillator for wireless sensor systems, Microelectronics Journal, vol. 41, (2010) 815-819.
  7. Nguyen Anh Tuan, 李旺勲, 具本注, 原田八十雄, 澤田和明, 石田誠, 完全無線型ユビキタス・マイクロセンサに向けたCMOS集積化オンチップアンテナの製作, 電気学会第27回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム講演論文集, Oct. 2010. pp307-312

関連特許

  1. 石田 誠,Nguyen Tuan Anh,原田八十雄,李 旺勲,"周波数特性の調整方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置", 特願 2010-226062
  2. 石田 誠, 澤田和明, 高尾英邦, 須藤 稔: "電波発電回路", 特許第4611093号, 2010年10月22日登録
  3. 石田 誠, 澤田和明, 高尾英邦, 須藤 稔: "シリコン基板を有する電子回路装置", 特許第4628008号, 2010年11月19日登録

関連リンク

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