「小型時空間筋電センサと時空間行動モデリング技術」

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研究代表者:
西田 佳史 (産業技術総合研究所 デジタルヒューマン 研究センター チーム長)
研究課題:
事故予防のための日常行動センシングおよび計算論の基盤技術

技術解説

日常行動は身近な物理現象であるのにも関わらず科学的な解明が進んでいない. 近年, ウェアラブルセンサやロケーションセンサが利用可能になっており, 日常行動現象の時空間データの取得による定量的把握が可能になりつつある. また, 大規模なセンサ情報からモデルを構築するベイジアンネットワークなどの統計数理手法も利用可能になりつつあり,「日常生活インフォマティクス」とでも呼べる新たな科学技術領域が始まろうとしている. 例えば, これまで日常生活科学の欠如によって進んでいなかった, 子どもや高齢者の不慮の事故といった社会問題は, 日常生活インフォマティクスの応用が期待される典型例である.

本研究では, 日常行動現象の時空間データを計測可能とするセンサとして, 新たに小型時空間筋電センサ(ウェアラブル筋電・位置センサ)を開発した.また, このセンサにより計測された生活行動の時空間データを用いた新しい行動モデリング手法を提案した. 開発システムと提案手法を, 近年, 社会問題となっている遊具の安全設計の問題へ応用した.遊具で遊んでいる「最中」の幼児行動の計測と, 幼児行動モデルに基づく遊具設計へと応用することで, その有効性を検証した.

本研究では, 乳幼児の日常行動における筋電位(EMG)に着目し, 幼児の行動をできるだけ妨げることがないようなウェアラブル筋電センサを開発した(図1). 筋電センサはフラッシュメモリ式, 無線式を開発し, 使用状況に応じて使い分けることができるようにした.また, 超音波3次元タグシステム(ロケーションセンサ)とウェアラブル筋電センサ, USBカメラを統合した, ロケーションEMG システム(L-EMG)を構築した. これによって, 画像処理解析のみでは取得困難であった人間の運動中における3 次元位置や生理情報取得を物理センサによって取得し, その行動現象を時空間に展開して記述することが可能となった.

日常行動理解研究を推進するために, 異分野の専門家や知見を利用するユーザが, 容易に理解可能な情報の表現法や計算法を提供する具体的なシステムとして「時空間意味情報マッピング・システム」を開発した. 開発システムは, 1)ロケーションセンサを用いた行動現象の時空間展開機能, 2)時空間座標系をベースとした多層的な情報の表現機能, 3)時空間統計数理を用いたモデリングとリターゲット機能(異なる対象にモデルを適用する機能)から構成される(図2).

保育園の協力を得て, 石崖型遊具で遊ぶ幼児47名を計測対象とした行動計測実験を行い, その実験データに対して,時空間意味情報マッピング・システムを応用した. EMGを時空間展開することによる多層的なマッピング(図2A), 時空間統計数理を用いたモデリング(図2B)を行い, メーカが提案した遊具に対して構築した行動モデルの適用(図2C)を行った詳細を以下に述べる.実験より得た筋電位データを石崖座標系での時空間データを記録した.次に, 計測データから機械学習によってモデル構築を行うベイジアンネットワークを用いて, 身体特徴量を考慮したモデルと, 考慮しないモデルの2種類のモデルを構築し, EMG推論の精度の比較を行った. その結果, 身体特徴量を考慮しないモデルは誤差率94.3%に対し, 身体特徴量を考慮したモデルの誤差率は43.5%であった.

概要図

図1. ウェアラブル筋電センサ

図1. ウェアラブル筋電センサ

図2. 時空間意味マッピングシステム

図2. 時空間意味マッピングシステム

論文等

  1. Y. Nishida, Y. Motomura, G. Kawakami, N. Matsumoto, H. Mizoguchi, "Spatio-tempora Semantic Map for Acquiring and Retargeting Knowledge on Everyday Life Behavior," Lecture Notes in Artificial Intelligence (K.Satoh et al. (Eds.)), Vol. 4914, pp. 63-75, Springer-Verlag, 2008
  2. 川上悟郎, 西田佳史, 本村陽一, 溝口博, "ロケーション筋電位センサを用いた行動の時空間展開に基づく日常生活行動モデリング," 日本知能情報ファジィ学会誌, Vol. 20, No. 2, pp. 190-200, 2008
  3. 西田佳史, 本村陽一, 川上悟郎, 溝口博,"時空間意味マッピングシステムを用いた日常生活行動理解~子どもの遊び行動のモデリングと保育園での長期観測に基づく定量評価~," 人工知能学会全国大会2008論文集, 3G3-06, June 2008 (旭川市ときわ市民ホール)
  4. G. Kawakami, Y. Nishida, H. Mizoguchi, "In Situ Measurement of Playing Children by Wireless Wearable Electromyography," The 6th IEEE International Conference on Sensors (Sensors 2007), pp. 993-996, October 2007(Atlanta, Georgia, USA)
  5. G. Kawakami, Y. Nishida, Y. Motomura, H. Mizoguchi, "Sensing and Modeling Children’s Playing Skills by Wearable Location-Electromyography and Bayesian Network," Proc. of International Symposium on Skill Science 2007 (ISSS'07), pp. 93-101, September 2007
  6. 西田佳史, 本村陽一, 川上悟郎, 松本修明, 溝口博, "日常生活行動理解のための時空間意味情報," 人工知能学会全国大会 2007論文集, pp. 2C5-10(1)-(4), July 2007(人工知能学会2007年度全国大会優秀賞)
  7. 川上悟郎, 西田佳史, 溝口博, "無線式ウェアラブル筋電センサを用いた日常環境における幼児行動計測," 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'07講演論文集, pp. 1A2H10(1)-(4), May 2007
  8. Y. Nishida, G. Kawakami, H. Mizoguchi, "Everyday grasping behavior measurement with wearable electromyography," in Proceedings of The 5th IEEE International Conference on Sensors (Sensors 2006), pp. 988-991, October 2006
  9. 川上悟郎, 西田佳史, 溝口博, "筋電センサを用いた乳幼児の日常行動計測," 第24回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 1M34(1)-(2), September 2006
  10. 西田 佳史, 川上悟郎, 溝口博, "ウェアラブル筋電センサを用いた日常把持計測," 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会'06講演論文集,2A1-D04(1)-(4), May 2006

関連特許

関連リンク

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