「ストレスセンシング技術」

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研究代表者:
山田 一郎 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
研究課題:
生体・環境情報処理基盤の開発とメタボリック症候群対策への応用

技術解説

ストレスは生活習慣病の原因の一つとされているが、さらに近年では、ストレスに由来する神経精神疾患(うつ病など)も大きな社会問題となっている。このような背景から、これらの疾患の予防をめざして、ストレスを日常生活下でモニタリングできる手法の開発が望まれている。
人体に生体恒常性を乱す、または乱しうる負荷(ストレッサ)が加わると、生体恒常性の維持・回復のための生理反応が生じる。この生理反応がストレス(ストレス反応)であり、心拍数などの様々な生理指標に変化が現れる。生理指標から人体に生じているストレスの種類を推定する試みは、その必要性に反して十分なされていない。その理由は、生理指標の変化に個人差があることや、ストレスの種類によって変化を示す生理指標が異なることによって、単一の生理指標ではストレスの種類を推定することが困難なためである。そこで、ストレスセンシングにおいては、複数の生理指標を選択的に用いることで、個人に依らないストレス種類の推定手法の開発をめざした。
実験室環境下で、計算タスクを与えて複数種(基準、緊張、単調の3種)のストレスを発生させて、被験者の主観評価とあわせてウェアラブルセンサによる生体情報のモニタリングを行うことで評価した。個人に依らないストレス種類の推定手法を実現するにあたって、生体情報として心電、脈波、呼吸、指部皮膚温度を計測し、これから9種の特徴量(生理指標)を得た。さらに、推定処理をステップ分けし、各ステップにおいて個人差が小さい複数の生理指標を用いる手法を提案した。推定に用いるべき生理指標の条件は「ストレスの種類を反映し、かつ個人差が小さいこと」である。
ストレス推定の手順を説明する。ステップ1において、「安静状態かストレス状態か」を推定する。次いで、ステップ2において、「計算(基準)ストレスかそれ以外のストレスか」、ステップ3において、「単調ストレスか緊張ストレスか」を推定する。推定結果を比較したところ、単一の生理指標によるストレス有無の判別率が60%程度であるのに対して、複数の生理指標を用いると判別率が90%程度にまで向上することが明らかになった。また、ストレス種類についても60%以上の判別率が得られている。

概要図

ストレス推定の手順

ストレス推定の手順

論文等

  1. 井出 裕人, ロペズ ギヨーム, 酒造 正樹, ドロネー ジャンジャック, 山田 一郎, 浅野 倫子, 横澤 一彦, “生理指標の多変量解析に基づく個人に依らないストレス推定手法の研究,” 情報処理学会創立50周年記念全国大会(第72回全国大会), 東京大学 本郷キャンパス, 文京区, March 9-11, 2010.
  2. H. Ide, G. Lopez, M. Shuzo, S. Mitsuyoshi, J.-J. Delaunay, I. Yamada, “Workplace Stress Estimation Method Based on Multivariate Analysis of Physiological Indices,” Proceedings of the International Conference on Health Informatics (HEALTHINF 2012), pp. 53-60, Algarve, Portugal, February 1-4, 2012.

関連特許

関連リンク

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