建物の施工安全に向けた応力異常検出

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研究代表者:
徐 超男 (産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター応力発光技術チーム 研究チーム長)
研究課題:
応力発光体を用いた安全管理ネットワークシステムの創出

技術解説

本試験では、ストーンテーブルの斫り(はつり)撤去によって使用中の建物が受けた影響を評価した(図1)。撤去する石台の近傍(図1A,B)にある亀裂に沿って応力発光センサ(シート、スプレー膜)を配置した(図1C)。記録はリアルタイム計測用CCDカメラシステム、応力履歴記録システム(銀塩系感光材料、カメラ使用)を設置し、工事前から工事中、工事後と連続的に計測を行った。その結果、何れの計測システムでも、施工の振動(参照用に配置した振動計の信号)の大きさに比例した発光パターンを、亀裂の位置に沿って繰り返し検出することに成功した。(図1D)はCCDで記録した映像。亀裂周辺の歪量:3μST、応力発光輝度値:20mcd/m2)。また、発光量から亀裂の開口変位量を換算すると、最大約1 _m、ひずみ速度約105 _ST/sec程度であることが分かった。以上より、工事現場で発生するレベルの変位や歪に対する検知システムとして、有効であることを初めて実証した。
さらに、建物内構造壁(荷重を支える壁)面にある扉のはつり撤去作業を対象に行った(図2A)。モニタリング箇所は実際に施工業者から聞き取りを行い、周辺で構造上弱いと思われる扉の角部(図2B、工事箇所との距離3 m)を選定した。この箇所は塗料で覆われたものの、塗料の下には亀裂が確認できた為、応力発光センサを壁塗料の上から塗布し、周辺に簡易的な暗室を作製し、CCDカメラを用いて積算記録を行った(図2C)。結果、工事前3日間は、劣化の項で紹介した結果同様、ひび割れの開口変位(ひずみゲージで参照計測)に由来する応力発光パターンを検知した(図2D左図の矢印)。一方、はつり工事の翌日、新たな発光パターンが検出され、更にこの最も強く発光する発光点が2〜3時間かけて左に移動した事が分かった(図2D中央図、右図の矢印)。実写真と応力発光画像との合成画像(図2E)を基に発光点が移動した軌跡を検討すると、扉と構造壁の境界線と一致する事が分かり、実際に現場を確認した所、同様の位置に新たな亀裂の発生を確認した。更に工事前後での発光パターンの変化(ひび割れの位置から右下の発光点に変化)は、周辺の構造壁にかかる力学バランスの変化を推察できる。これらは本システムが2次元的な面情報を計測できる事に由来する結果である。以上より、本システムは工事の影響の抽出と亀裂の進展モニタリングに有効と言える。
 これらの結果は、実現場の応力ひずみモニタリングを実際に可能であることを示し、更に亀裂進展や力学バランスの変動等、従来の点センサでは困難であった面的な変化の情報が得られた事は特筆すべき成果である。また現場適応に関する成果を得た事で、プレス発表、展示会、学会発表を通して、ユーザー候補と言うべき現場の方々の反響、問い合わせを多く頂いた事も、今後のモニタリング、非破壊検査への波及を強く予感させる。特に、近接施工モニタリングは影響に伴う補償時の証拠として、劣化・亀裂進展では安全管理のツールとして期待する声を多く頂いた。印象的なユーザー候補の声として、「ひずみゲージと同じ感度でありながら、ユーザーフレンドリー」との評価がある。今後ますます経費や人員を削減されながらも効率化や高信頼が求められるモニタリング・非破壊検査業界、建設業界に対して、本システムがモニタリングツールとして波及する事を強く期待される反響と考えている。

概要図

図1:近接施工の応力モニタリング

図1:近接施工の応力モニタリング

図2:亀裂進展の応力発光モニタリング

図2:亀裂進展の応力発光モニタリング

論文等

  1. N. Terasaki, C.S. Li, L. Zhang, S. Guo, Y. Sakata, D. Ono, M. Tsubai, N. Bu, Y. Imai, Y. Adachi, H.Yamada, N. Ueno, C.N. Xu, “Application Examples of Mechanoluminescent Diagnostic Technique”, Proceedings of International Forum on Mechanoluminescence and Novel Structural Health Diagnosis 2011, pp.162-169, 2012
  2. 寺崎正、李晨姝、張琳、郭樹強、坂田義太朗、小野大輔、椿井正義、卜楠、今井祐介、安達芳雄、山田浩志、上野直広、徐超男, “応力発光技術の実現場適応事例”, Proceedings of International Forum on Mechanoluminescence and Novel Structural Health Diagnosis 2011, pp. 154-161, 2012
  3. 小野大輔, 川端雄一郎, 李晨姝, 李承周, 上野直広, 岩波光保、徐超男, “応力発光センサーによるコンクリートのひび割れ進展の可視化”, 可視化情報学会誌, 2010Vol.30 Suppl.No.1, pp.343-344, 2010

関連特許

関連リンク

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