橋梁の応力異常検出

Check

研究代表者:
徐 超男 (産業技術総合研究所 生産計測技術研究センター応力発光技術チーム 研究チーム長)
研究課題:
応力発光体を用いた安全管理ネットワークシステムの創出

技術解説

 橋梁のように繰り返し荷重を受ける構造物において、異常箇所の検出及び監視は橋梁の安全管理における重要な課題となっている。福岡県の朝倉県土整備事務所の協力を得て管内の橋梁(築50年、朝日橋)において実験を行った。応力発光体を塗布したシートを橋桁コンクリートのひび割れ部に貼り付け、車両通過時の応力発光の検出を行った。その結果、大型車両通行時のような大負荷時において応力発光の検出に成功した。また、目視で確認できるひび割れ部の応力発光の他に目視では確認できない箇所でも応力発光を検出でき、マイクロクラックの存在を応力発光により確認できることがわかった。なお、実験期間中の2ヶ月間に応力発光体シートの劣化は見られなかった。特筆すべき結果として、目視では亀裂が確認できなかった場所でも応力発光を確認し、亀裂の進展に繋がる応力集中を見抜くことに成功した。このことは、 “見えない危険な応力集中を見抜く!”という応力発光体を用いた安全管理システムの最大の特徴が、実現場レベルにおいても有効であることを明確に示唆している。更に、本安全管理ネットワークシステム実証では、輝度17mcd/m2以上の応力発光を仮想的な応力異常として抽出し、有線・無線のネットワークシステムを使用して危険信号を発信することに成功した。
さらに、実橋梁を用いた損傷検査実証試験を実施した。本実証試験では、検査会社等の要請を受け、鳥飼大橋(大阪)に対して共同で行った。橋桁金属部及びコンクリート床版に応力発光センサを塗布し、発生した亀裂の可視化及びその探傷を行った。橋桁金属部に生じた亀裂や金属腐食部に対し、スプレー法を用いて応力発光センサを塗布した。25tトラックによる載荷試験を実施し、荷重を受けた際の応力発光を開発したセンサシステムを用いて可視化計測を行った。リアルタイム計測された応力発光画像(図1.2)より、トラックの通過に伴い、応力発光が生じていることが確認された。亀裂部では亀裂に沿った応力発光が可視化計測された(図1)。金属腐食部では、亀裂の存在は確認されていなかったが、亀裂の存在を予知する応力発光画像が得られた(図2)。さらに、金属腐食部では、その他の腐食部において周囲よりも高い応力発光強度が得られたことから、亀裂探傷のみならず金属の腐食状態も応力発光センサにより可視化計測可能であることが示された。同時計測したひずみゲージの計測結果と時刻歴データについて比較したところ、応力発光強度の時間変動とひずみゲージ計測結果の時間変動は定性的に一致していた。従来、ひずみゲージを用いた計測は点計測であるため面的に計測する場合、多数のひずみゲージを必要とする。しかし応力発光センサを用いることにより、計測対象を面的に計測することができる。さらにひずみゲージと同等のひずみ検出感度を有することから、ひずみゲージに代わる新たな計測法であることが実証できた。
以上のように、橋梁の橋桁金属部において、応力発光センサを用いた面計測により、亀裂探傷のみならず金属腐食部の応力分布を可視化計測することができ、ひずみゲージに代わる新たな面計測法であることが実証された。
また、東京都江東区の協力を得て砂潮橋(東京)を2010年と2011年に渡って、センサを連続設置したまま、開発したシステムによる長期間遠隔モニタリング(九州からの遠隔制御)を実施した。砂潮橋の遠隔モニタリング実験はそれぞれ約1ヶ月であり、その間、車両通過で生じる荷重・開口変位由来の応力発光を検出でき、その様子を産総研(佐賀県鳥栖市)からモニタリングすることができた。また、前年度実験から約半年が経過していたが、実環境使用下で応力発光シートの劣化もないことを確認できた。なお,平成23年3月に東日本大震災が発生し、砂潮橋のある江東区でも震度5強を観測したが、今年度の計測結果からは地震の影響を受けているようなデータは認められなかった。橋梁裏のコンクリート床板の亀裂の可視化計測、及び遠隔地からのリアルタイムモニタリング例を示す。図3中の緑枠は6ヶ月間敷設された応力発光シートを示し、赤枠は6ヵ月後の再計測の際に新設された応力発光シートを示している。なお、新設した応力発光シートは6ヶ月前に敷設したシートと全く同一のものである。計測画像から亀裂上の応力発光が可視化計測されていることが確認できる。図中の緑枠内を比較したところ、同一箇所が強く発光していることから、発光分布パターンは6ヶ月経過前後で同様であることが確認された。また、新たな発光分布パターンが検出されなかったことから、亀裂の進展や力学バランスの変化による亀裂開口状態の変化がなかったと推測される。以上から、本実験により、橋梁のコンクリート床板における亀裂を応力発光センサにより可視化することができ、長期耐久性も有していることが実証された。
戦後の高度経済成長期に整備された橋梁などの社会資本の多くは今後10~20年の間に耐用年数を迎える。昨今の経済状況から新規建設よりも長寿命化が求められている。これらの解決策として、構造物の破壊につながる危険を早期に発見する科学技術が急速に必要とされている。従来の力学計測においてはひずみゲージが多く使用されていた。しかし、点計測であるひずみゲージでは微小亀裂などを発見するとは困難であり、面的に計測するためには多くのひずみゲージが必要となる。応力発光センサを用いることにより、計測対象の挙動を面的に計測することができるため、目視では確認困難な微小亀裂の発見や亀裂進展の様子など捉えることができる。そのため、従来の点計測に代わる新たな診断法として期待できる。
これらの実橋梁での実験により、ひび割れの発生・開口・進展を応力発光体により面的に追跡できるという大きな特長を確認でき、応力発光体を用いた安全管理ネットワークシステムの実構造物への適用性を検証できた。実用化へ向けた応力発光体の長期耐久性などまだ引き続き検証が必要であるが、今後はひび割れ挙動の面的な計測の実務に適用されていくものと期待している。

概要図

図1:亀裂存在部応力発光画像

図1:亀裂存在部応力発光画像

図2:金属腐食部応力発光画像

図2:金属腐食部応力発光画像

図3:コンクリート床板応力発光画像(積分・規格化画像)

図3:コンクリート床板応力発光画像(積分・規格化画像)

論文等

  1. N. Terasaki, C.N. Xu, C.S. Li, C.Z. Li, L. Zhang, D. Ono, M. Tsubai, Y. Adachi, T. Shinokawa, Y. Imai, N. Ueno, ”Visualization of active crack on bridge in use by mechanoluminescent sensor”, Proceedings of SPIE, vol.8348, 2012.02
  2. 上野直広、小野大輔、徐超男, “構造物の応力分布に起因した応力発光のパターン検出”, 計測自動制御学会論文集, 2011, Vol.48 No.1, pp.67-72, 2012
  3. 小野大輔, 川端雄一郎, 李晨姝, 李承周, 上野直広, 岩波光保、徐超男, “応力発光センサーによるコンクリートのひび割れ進展の可視化”, 可視化情報学会誌, 2010Vol.30 Suppl.No.1, pp.343-344, 2010

関連特許

関連リンク

ページの先頭へ