形状記憶圧電アクチュエータ

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研究代表者:
佐藤 知正 (東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
研究課題:
安全・安心のための移動体センシング技術

技術解説

 パルス電圧により形状記憶をさせることができるアクチュエータ.従来の圧電素子は,超音波モータや圧電リレー,インクジェットヘッドなどのアクチュエータや,ジャイロセンサ,加速度センサなどのセンサに応用されているが,これらの駆動方法は圧電変位と駆動電界が比例するという概念に基づいていた.すなわち,入力電圧をゼロに戻すと,圧電素子が発生する変位や力は入力前の値に戻ってしまう.これに対して,この形状記憶圧電アクチュエータでは,パルス電圧によって駆動されるので,電圧をゼロに戻してもその形状を維持することができる.一方,逆方向の電圧パルスを加えると元の形状に戻る.
 この駆動原理を図1に示す.本来,強誘電体構造を有する圧電素子の内部は分極ドメインと呼ばれる結晶集合体より形成され,分極方向は外部電界により制御可能である.この分極方向を外部電界によって制御することにより,圧電変位は図1に示すような複雑な関係となりバタフライ曲線と呼ばれる.このバタフライ圧電変位特性のうち,従来の圧電アクチュエータやセンサは,外部電界との間に線形関係がある範囲でのみ利用されていた.すなわち,分極方向は反転させることのない範囲で用いられていた.
 これに対して,提案する手法では,分極反転も含めたバタフライ圧電変位特性を用いることにより,圧電変位特性にメモリ特性を導入している.ただし,分極反転も含めた圧電変位特性では,外部電界に対して対称になってしまうために,外部電界がゼロの状態で一つの値しかもたない.つまり,分極が完全にある方向に揃った状態と,それと逆方向に揃った状態では圧電変位は同じ値になってしまう.そこで,提案手法では,一方向は完全に分極が揃った状態とし,もう一方の状態は分極が反転するときの電界振幅を与えることで分極がランダムになった状態とした.この結果,分極が完全に揃った状態と,脱分極状態が形成され,その差分が形状記憶量となる.
 この駆動原理の前に,電界インプリント減少を利用した形状記憶を提案したが,この方法では疲労特性に問題があった.これに対して,上記した非対称な電圧を用いた形状記憶圧電アクチュエータにおいては,図2に示すように連続駆動において良好な疲労特性を示し,10万回の連続駆動を確認することができた.また,リテンションについても1年経過した後でも,形状変化量は5%程度であると予測され,アプリケーションによっては全く問題がないことが実証されつつある.
 強誘電体は,本アプリケーションで応用されている圧電特性と同時に,非線形光学応用や非線形誘電特性を有している.これらの興味ある特性についても,非対称パルス駆動を行うことにより,今までにない新しいメモリ特性を得ることができている.たとえば,透明強誘電体の一つであるPLZTを用いることにより,透過率や屈折率にメモリ特性を創成することに成功している.さらに,形状記憶圧電アクチュエータを超磁歪素子とコンポジット化し,永久磁石と組み合わせることにより磁気特性を圧電パルス駆動により記憶特性を付与させることを実証した.

論文リスト
1. Takeshi MORITA, Yoichi KADOTA and Hiroshi HOSAKA, "Shape memory piezoelectric actuator", Appl. Phys. Lett., vol. 90-8, No. 082909, 2007
2. Kazuhiko INOUE and Takeshi MORITA, "PLZT light transmittance memory driven with asymmetric pulse voltage operation", J. Korean Phys. Soc., vol. 57, No. 4, pp. 855-858, 2010
3. Takeshi MORITA and Tomoya OZAKI, "Magnetic force memory effect from a composite of a magnetostrictive material and a shape memory piezoelectric actuator", Sensors and Actuators, vol.161, pp.266-270, 2010
4. Yoichi KADOTA, Hiroshi HOSAKA and Takeshi MORITA, "Field induced strain memory with non-180o domain reorientation control", J. Korean Phys. Soc., vol. 57, No. 4, pp. 902-906, 2010

概要図

図1 形状記憶圧電アクチュエータの原理

図1 形状記憶圧電アクチュエータの原理

図2 連続駆動における形状記憶量の疲労特性

図2 連続駆動における形状記憶量の疲労特性

論文等

関連特許

関連リンク

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