振動エネルギの電気エネルギへの変換技術

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研究代表者:
佐藤 知正 (東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
研究課題:
安全・安心のための移動体センシング技術

技術解説

 振動エネルギの電気エネルギへの変換には,主として電磁誘導,静電誘導,圧電効果が用いられる.これらは通常,アクチュエータやセンサーに用いられるが,原理的にはそのまま発電機として用いることができる.参考文献に基づき,3つの変換技術の概要を述べる.
(1) 電磁誘導型発電
 基本構成を図1に示す.コイルと永久磁石の相対運動によりコイルに誘導電圧を発生する.装置サイズが1cm3程度の場合,入力振動を120Hz,2.25m/s2の正弦波と仮定し,コイルの巻線間隔を1m,磁束密度を1テスラとすると,発生電圧は30mVになる.一般の電子機器に利用するには整流して直流を得ねばならない.これには数Vに昇圧する必要があり,トランスでの損失と占有体積により,体積効率が大幅に下がる.このため,電磁誘導型は1cm3以下の小型化は難しい.
(2) 静電型発電
 基本構成を図2に示す.対向する電極が振動すると静電容量が変化し,電荷が移動し,負荷抵抗Rで仕事をする.最大の欠点は,予め導体に電荷を与える必要があり,そのための別の電源(エレクトレットなど)が必要な点である.第2の欠点は,キャパシタ間の隙間を微小かつ非接触化するためにストッパーが必要であり,機械的ロスが大きく,信頼性も低下する点である.利点は,集積回路の製造技術と整合性が良いこと,数Vオーダーの電圧をトランスを介さず直接発生できることである.このため,1mm以下の微小サイズでは,静電型が有利と考えられる.
(3) 圧電型発電
 基本構成を図3に示す.おもりが振動すると圧電素子が変形し電圧が発生する.圧電体の発生電圧は大きく,発生電流は小さい.例えば,1cm角程度のサイズでは,数V,10~100 Aのオーダーの出力が得られる.電圧が高いため整流が容易である.他の利点として,発電開始時に他の電源を必要としない.機械的なストッパーが不要な点がある.ただし,MEMSプロセスとの整合はあまりよくなく,電気機械変換効率が著しく低下する.以上から,圧電型は電磁誘導型と静電型の中間のサイズで有利と考えられる.
(4) エネルギー密度の比較
 磁界のエネルギー密度はB2/2μoである.ここで,Bは磁束密度,μoは真空の透磁率1.26×10-6H/mであり,磁束密度としてネオジウム磁石の保持力1テスラを用いると,エネルギー密度は400 mJ/cm3である.電界のエネルギー密度はεoE2/2である.εoは真空の誘電率8.854×10-12F/mであり,電界Eとして,大気の絶縁耐圧(Paschenの法則)100MV/m(1μmのギャップに対して100V)を用いると,エネルギ密度は44 mJ/cm3となる.現実的には,1μmのギャップに対して30V程度が限界であり,この場合には,4 mJ/cm3となる.圧電体では,ヤング率をY,降伏応力をσy,圧電結合係数をkとすると,最大エネルギ密度はy2k2/2Yである.k=1は,機械的エネルギーから電気的エネルギーへのロスのない変換を意味する.一般的な圧電体(PZT-5H)の材料データを用いると,最大エネルギ密度は35.4mJ/cm3となる.

論文等
S. Roundy, P.K. Wright, J. M. Rabaey, “Energy Scavenging for Wireless Sensor Networks”, Kluwer, 2004

概要図

図1 電磁誘導型発電機の構成

図1 電磁誘導型発電機の構成

図2 静電型発電機の原理

図2 静電型発電機の原理

図3 圧電型発電機の基本構成

図3 圧電型発電機の基本構成

論文等

関連特許

関連リンク

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